哲学科医療技術の進歩により、われわれは生命の誕生と終わりとを操作できるようになり、生命の質を選択できるまでになった。本授業では、自己決定のもとに行われるいのちの選択の倫理的な問題を臨床哲学の視点から考察する。机上の議論に留まらないように、臨床現場を捉えたドキュメンタリー映像を用いるだけでなく、障がいを生きる人々を支援する通所施設の職員や、重い障害と持つ子の親、進行性難病ALS患者を講師に招き、同病患者と通信授業を行ったり、メディア情報空間を活用して臨床哲学対話を行う。受講生は、この種の問題が他人事ではなく、いつかわがこととなる可能性がある問題であることを意識しながら、生命倫理が家庭や教育現場で扱われる際の問題点などについても考察する。生命倫理に関する自己決定の問題構造を知る。当事者・近親者の立場から問題を見る視点(1人称・2人称)と、社会の側から見る視点(3人称)との違いを学ぶ。生命倫理の根本にある哲学的な問題を、わがこととして、当事者の視点に近づいて考察することを目指すためには、具体的な他者と向き合い聴くことが必要である。このことは、家庭や教育現場で十分配慮されなければならないことを学ぶ。外部講師の講演やビデオ教材を視聴したあと、内容の考察を授業外の課題とすることがある。講義の中で示されるキーワードを使って、倫理問題を説明できるように復習し、社会問題や日常生活の中から、生命倫理問題を考えるように努力することを期待する。授業外で60時間以上の学修を行うこと。【第1回】ガイダンス臨床哲学とは ビデオ「人間改良を目指した男たち」【第2回】内なる優生思想と出生前診断 ビデオ「生命の質検査社会の到来」【第3回】尊厳死と安楽死 NHKドキュメンタリーいのちのことば【第4回】ALS患者から聞く(1)参議院議員舩後靖彦さん【第5回】ALS患者さんから聞く(2)日本ALS協会理事・NPO法人「境を越えて」理事長岡部宏生氏【第6回】ALS患者家族から聞く(3)ALS/MNDサポートセンター さくら会理事川口有美子氏【第7回】生命操作の倫理とコロナトリアージ【第8回】「生きるに値しない命」を選別する時代-命と尊厳を考える【第9回】臓器移植を巡る問題【第10回】殺す親殺させられる親 重度重複障害者の母 フリーライター 児玉真美氏【第11回】重度重複障害がある人と地域社会 社会福祉法人十愛療育会 たっち保土ヶ谷 所長 生田目昭彦氏【第12回】内なる優生思想と遺伝子診断【第13回】個人モデルと社会モデル 参議院議員天畠大輔さん【第14回】臨床哲学とわがこと【第15回】まとめ 学期末試験レポート課題提示ンン注:授業の進行は受講生の興味関心に適宜対応するので、予定を変更する可能性もある。インターネット通信授業や外部講師の講演は、先方の都合により、予定が変わる可能性がある。は、オフィスアワーまたはメール(stasaka@ris.ac.jp)にて対応する。『臨床哲学』田坂さつき(KADOkAWA)2022、『自己決定権という罠』小松美彦(言視社)2018、『いのちの倫理』大庭健(ナカニシア出版)2012、『命は誰のものか』香川知晶(ディスカバー携書)2009、『ケアの社会倫理学』川本隆史編(有斐閣)2005、『笑顔のメッセンジャー』プラトン[著];三嶋輝夫,田中享英訳(文芸社)2010、『パイドン:魂の不死について』プラトン著;岩田靖夫訳(岩波書店)1998、『人間になる』ジャン・バニエ(新教出版社)2005、『はじめて出会う生命倫理』玉井真理子・大谷いづみ(有斐閣)2011、『生権力の歴史-脳死・尊厳死・人間の尊厳をめぐって』小松美彦(青土社)2012教科書は指定しないが、毎回プリントを配布する。授業中、質問や意見等、受講生の積極的な意見共有は歓迎する。難病患者を講師に招く授業で教室変更がありうるので注意すること。第1期火曜 木曜 2限か6限 第2期 火曜 昼休み 3限場所 研究室2号館1202stasaka@ris.ac.jpにメールでの予約推奨。他の時間帯やオンラインも要相談。抽 選 の 有 無なし備考田坂 さつき第2期講義コード11B5126801授業形態講義科目名臨床哲学履修前提条件授業の目的到達目標授業外学修内容・授業外学修時間数授業計画成績評価の方法毎回の課題45% 学期末テストレポート55% 挙手による意見共有は別途加点する。フィードバックの内容課題に対するフィードバックは次週授業冒頭で行う。ポータルサイトの掲示板での質問に応答する。個人的な質問への対応教科書指定図書参考書『道徳を問い直す』河野哲也(ちくま新書)2011教員からのお知らせオフィスアワーアクティブ・ラーニングの内容挙手により意見共有し、教員がコメントする。課題での考察については、授業内にコメントして回答する。その他 担 当 教 員 開 講 期 ― 67 ―
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