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本講義は「音楽を聴く経験とは何か?」という問題に答えることを課題とする。そこで、音楽を対象とした美学者たちの哲学的分析を、「楽曲がもつ美的性質」、「音楽を聴く経験における感情」などの主要トピックにわたって紹介する。次いでこれまでのそうした哲学的分析が依拠する前提を取り上げて、批判的に考察する。本講義では、「音楽」と呼びうる表現形式が人間のあらゆる共同体に存在するという「普遍性」と、そうした表現形式が多岐にわたるあり方で存在するという「多様性」の両方を基礎的な観察として共有する。音楽の普遍性と多様性に注目しながら、より望ましい音楽の哲学的分析を提案し、冒頭の問いへの回答を提案する。講義のトピックにあわせて、授業中にさまざまな楽曲の音源を聴く。その聴取体験をデータとして楽曲の体験に哲学的考察を加えられる。たとえばあなたがMy Favorite Thingsのスウィングアレンジが哀愁を帯びて聞こえた場合、「なぜそう聴こえるのか?」という問いに楽曲に即した(単に主観的ではない)説明を与える試みができるようになる。本講義で紹介する美学者たちも楽曲に即した説明をするけれども、それは本講義でとるアプローチと異なる。両者のアプローチを説明でき、具体例に即して両者の違いを指摘できる。授業内で作成した板書はファイルとして授業後に共有する。この資料と提示する参照文献を使って授業後に復習し、内容についての疑問・意見を出す。各回につき4時間、合計60時間の授業外学習が必要となる。【第1回】 講義概要・評価方法の通知、導入【第2回】 クリティカルシンキング講義【第3回】 クリティカルシンキング練習問題、音楽の普遍性と多様性1:文化的多様性と形式的多様性【第4回】 クリティカルシンキング課題の回答と解説、趣味判断と美的性質1: 【第5回】 音楽の普遍性と多様性1:カントにおける美的判断(1)【第6回】 趣味判断と美的性質2:カントにおける美的判断(2)【第7回】 音楽の普遍性と多様性3:技術革新と視聴環境の変化【第8回】 趣味判断と美的性質3:音楽は本質的に独りで聞くものなのか?― ザングウィルの回答【第9回】 趣味判断と美的性質4:音楽は本質的に独りで聞くものなのか?― ザングウィルへの応答【第10回】 音楽の普遍性と多様性4:音楽的経験と記述の問題(音楽からわれわれは何を聞き取っているのか? 【第11回】 音楽的経験における感情1:ハンズリックとその後継者たち(1)【第12回】 音楽的経験における感情2:ハンズリックとその後継者たち(2)【第13回】 音楽的経験における感情3:意味と意義の区別と音楽の多相性【第14回】 期末エッセーの詳細・書き方の講義、書き方のアドバイス、音楽の普遍性と多様性5: 【第15回】 音楽の普遍性と多様性6:音を「音楽として聴く」とはどういうことか?― 言語能力の副産物宿題 30%授業への質問や相談は、授業中、ポータルの掲示板、C-Learningのアンケートで受け付ける。後の授業で、それに対するフィードバックを毎回行う。毎回の授業にはGoogle FormsかC-Learningを用いた課題が付随するので、授業外でこれらに取り組む。これについても後の授業でフィードバックを行う。の何が悲しいのか 音楽美学と心の哲学』野矢 茂樹、西村 義樹(慶應義塾大学出版会)2019音楽的趣味の道徳的・政治的含意―スクルートンの大衆音楽蔑視―「普遍言語」という言説とその背景)音を「音楽として聴く」とはどういうことか?― 美的対象抽 選 の 有 無なし備考森永 豊第2期講義コード11B5135401授業形態講義科目名美学特殊講義2履修前提条件授業の目的到達目標授業外学修内容・授業外学修時間数授業計画成績評価の方法期末エッセー 70%フィードバックの内容教科書指定図書『判断力批判』イマヌエル・カント(岩波書店)1964、『分析美学入門』ロバート・ステッカー(勁草書房)2013、『悲しい曲参考書『分析美学基本論文集』西村 清和(勁草書房)2015教員からのお知らせオフィスアワー本授業に関する質問・相談は、授業終了後、次の授業に支障がない範囲で教室内にて対応します。アクティブ・ラーニングの内容意見共有、教員からのフィードバックによる振り返り、能動的な授業外学習その他   担 当 教 員    開 講 期 ― 94 ―

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