学生通信

2020/07/28

 不定期連載ですが、文学部の「今」を学生自身の言葉で発信します。受験生、在学生、保護者の方々。広く立正大学文学部を知っていただけたら幸いです。もし、自分も書いてみたいという学生がいれば学部事務室まで気軽にお声がけください。

vol.3
「タッパーウェア・パーティってなに?」
(英文4年 駒込高等学校卒)

私は文学科の英語英米文学専攻コースに所属しています。大学4年になると講義は少なくなり、勉強時間のほとんどを卒業論文に充てることになります。今回の学生通信では、大学で文学作品を読む魅力を紹介したいと思います。

私が卒業論文で扱うのは、アメリカの作家トマス・ピンチョンによる『競売ナンバー49の叫び』(1966年)という小説です。小説の冒頭は、カリフォルニア州の郊外に暮らす女性エディパ・マースが、タッパーウェア・パーティから帰宅したところ、かつての恋人の遺言執行人に指名されたことを知る場面から始まります。ここで、冒頭の細部に注目してみましょう。

「タッパーウェア」とは、一般的にプラスチック製の密閉容器のことを言いますが、本来この名称はタッパーウェア社のみの製品を指すものです。1940年代に開発されて小売店で販売を始めると、1950年代にはブラウニー・ワイズという女性によって、ホームパーティ形式での販売が始められました。以降は、ホステスの家に女性たちが集まり、製品のデモンストレーションを行うホームパーティ形式のみで独占的に販売をするようになり、それを「タッパーウェア・パーティ」と呼ぶようになります。

では、主人公が参加していた「タッパーウェア・パーティ」から、どんなことが読み取れるのでしょうか?

ひとつは、女性の専業主婦化の助長です。食品の保存を可能にし、家庭における豊かな消費生活を支えるタッパーウェアは、その密閉性のイメージから、主人公を閉じ込める環境をほのめかしています。
次に、女性の家庭外での就労です。パーティを開くことは、周囲に開かれた社交の機会を提供すると同時に、男性の企業文化に対抗して、女性の社会進出や自己実現に至る機会を提供していたとも考えられます。そのため、物語が進むにつれて主人公が自立に向けて歩み出ることも読み取れます。
また、タッパーウェア・パーティに参加していた事実だけでも、主人公がアメリカの郊外で暮らす中流階級の主婦であることを端的に表現しており、読者にそのイメージを連想させます。つまり、タッパーウェアは商品として、またパーティとして、20世紀後半の女性および消費の社会的かつ経済的役割の変化と実態を指し示しているのです。

こうした解釈は、小説の時代背景にある第二波フェミニズムとも関係しながら、物語が醸す雰囲気を冒頭で伝えています。ただ読んでいれば見逃してしまうかもしれない些細な描写でも、着眼点を向けてじっくりと読んでみると、当時の流行や社会問題が浮かび上がり、国も文化も時代も違う世界の一端を垣間見ることができます。

大学3年から始まるゼミや課外活動の一環である読書会では、小説の読解やディスカッションに時間をかけることができ、また学生が中心となって進行するので、意欲的に学習できます。たくさん時間のある大学生活のなかで、国内外を問わず、小説をはじめとする様々な書籍を読んで、知見を広めたり深めたりして、充実させてみてください。それは振り返ると贅沢な時間になるはずです。

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